男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2026/05/02 5:07:09|小説「蛍」
蛍―05―
蛍―05―

 その日も良い天気だった、私はコンビニでお握りやお茶、おやつなどを買って、リュックに詰め込むと山に向かった。山に登る途中では、蝉が賑やかに鳴いている。
 1時間半ほどで山頂に着いた。時間を約束していたわけではないので、彼女いつ来るかはわからない。私は、木陰の岩の上で、持って行った本を広げて待った。
 1時間ほど待ったところで彼女がやって来た。この日、彼女はライトブルーのシャツを着ていた。この季節は虫が多いので半袖は避けている。
「こんにちは。今日は、お揃いになりましたね。」
 私も同じ色のシャツを着ていたのである。
「三嶋さんが、この色のシャツを着ていたので、買って来ました。」
「早速ですが、昼食にしませんか。」
 彼女を私の隣に座らせ、そう言ってリュックからお握りを取り出すと、彼女もリュックから包みを取り出した。やはりお握りだった。沢庵や卵焼きが添えてあった。
「アハハッ、ここでも意見が合いましたね。」
 私達は、先に彼女が作って来たお握りから先に食べることにした。
 山で食べる食事は美味しかった。ましてや彼女と一緒に食べる味は格別である。
 いつもは家で、一人で食べている。たまにはステーキや刺身など贅沢なものを買って来ることもあったが、山の上で彼女と食べるお握りの味にはとても及ばないと思う。
 1時間ほどお喋りをしながらの食事を終えたところで、私が言った。
「この間のところに泳ぎに行きましょうか。」
「いいですね。暑いですものね。」
 話が決まると、急いで下山の準備をした。谷あいにある滝は、陽が沈むのが早いので、陽が照っているうちに行きたかったのである。下りるとき彼女も思いは同じようで速足だったし、私も必死で後に着いて行った。
 急いで下りたせいで、40分ほどで滝に着いた。
 早速、二人は衣類を脱いだ。彼女は恥ずかしがる様子もなく滝の方を見ながら衣類を脱いでいった。私も、彼女に引かれるように来ているものを脱いだ。
 裸になった彼女は、勢いよく水に飛び込んだ。私も、彼女の後ろから水に飛び込むと、彼女の後ろを追うように泳いだ。
 相変わらず彼女は泳ぎが上手で、私は必死に後をついて行った。同じところをグルグル回るだけなので、いつしか彼女が私の後ろに来ていた。
 30分ほど泳いだところで、私が先に水から出てリュックから自分が持ってきたお握りとお茶を取り出して彼女を呼んだ。
「ねえ、おやつの時間にしましょう。」
 彼女は、前を隠すでもなく水から上がると私のところに歩いて来て横に座った。
           ―続く―







2026/05/01 4:51:12|小説「蛍」
蛍―04―
蛍―04―

 私は、水に入った。これまで散々汗をかいていたので、水の冷たさが心地良かった。
 滝つぼは、広く深かった。直径が10mほどの広さで、深いところでは私の胸ほどの高さがある。彼女はその中をぐるぐる回りながら泳ぎ、私も彼女の後ろから泳いだ。
 30分ほど泳いでから、私達は裸のまま岩に座った。私は息を切らしていたが、彼女は平然としていた。彼女の裸身が、太陽に光に眩しかった。
 私が、「山野さんは、随分泳ぎが上手ですね。」と感心するように言うと、彼女は「わたし、子供の頃から夏は川で泳いでいました。」と言った。きっと子供の頃から、自然の中で育って来たのだろう。
 周囲は、深い緑で覆われていて、滝の落ちる音だけが聞こえている。そのとき、何かが叫ぶような音が聞こえた。私が、驚いて振り向くと、彼女が言った。
「猿です。この辺には何頭かいますが、人を襲ったりはしませんから大丈夫です。」
「この辺には、猿がいるのですか。」
「えゝ、いろいろな動物がいます。猿の他にイノシシもいますし、キツネやタヌキもいます。みんな悪戯はしますが、人間を襲ったりはしません。彼等は、ある意味で森の仲間なのです。」
「そうですか、山野さんは怖くはないのですね。」
「そうですね、山の中で暮らしているとみんな友達のようなものです。」
 彼女は、やゝ自嘲気味にそう言うと、また水に入った。私も、後を追うように彼女の後に続いた。
 その後、30分ほど泳いでは休み、30分ほど泳いでは休んだ。夏とはいえ谷あいの森の日暮れは早い。3時になると、すっかり陽が陰る。
 彼女が衣類を身に着けるときの様子は、いかにも純真そのものだった。私が目をやっても、恥ずかしがるような様子はない。私の方を見て、微笑んでいた。
 私達は、服を着終えると滝を後にした。
先に歩いている彼女が、分かれ道に来たときに言った。
「ここから一旦山の方に戻るのは大変でしょう。こっちの道を行けば、平坦な道を通って駐車場に行けます。」
そう言うと先に歩き始めた。私は、彼女の後ろを一緒に下りて行った。分かれ道に来たとき、彼女が言った。
「私はここで失礼しますが、こっちに行けば駐車場に行きます。ちょっと距離はありますが、一本道ですから間違えることはないと思います。」
「今日はありがとう。とても楽しかったです。また一緒に泳ぎたいですね。」
 私はそう言うと、彼女の肩に手を載せて身体を引き寄せ、唇に軽いキスをした。
 彼女はちょっと驚いた様子だったが、すぐに私のキスに応じた。それは唇と唇が触れるだけの軽いものだったが、私の胸は高鳴っていた。
 私達は、2日後に会うことを約束してそれぞれの道を歩いて行った。
           ―続く―







2026/04/30 4:34:38|小説「蛍」
蛍―03―
蛍―03―
 
 彼女は、私がいることを確認すると、軽やかな足取りでやって来た。
 私は、まず先日の礼を言った。
「こんにちは、この間はありがとうございました。本当に助かりました。」
「今日は、もう登っていたのですね。先日は、無事に帰れましたか。」
「えゝ、お陰様で、迷わず駐車場に行くことができました。」
「そうですか、それは良かったです。」
「僕は、あなたに会いたかった。今日は、会えて良かったです。」
「私も、会えて嬉しいです。」
 私はリュックからキャンディを取り出して、彼女にあげた。
「ありがとうございます。山で食べると、美味しいですね。」
 しばらく休憩を兼ねてお喋りをしていた。家では一人なので、話し相手はいない。彼女と話をするのは楽しかった。
 彼女は決して多弁ではなく、どっちかと言うと聞き上手だった。私が喋っていると、笑顔で私の目を見ながら話を聞いて、ときどき相槌を打っていた。
30分ほどして下山にかかった。山頂から半分ほど下りてきたところで、彼女と別れる。彼女は家の方に、私は駐車場に向かって行った。
 その日から、2〜3日毎に彼女に会うことができた。私は、毎日のように山に登り、彼女が来るのを待っていた。
彼女は、月、水、金曜日に登って来ることが多かった。
 彼女に会えた日は嬉しかった。とりとめのない話をしているだけなのだが、お喋りをしていることが楽しかったのである。
7月になり、森の新緑はいつしか深い緑になっていた。あちこちで蝉がせわしく鳴いて、余計に暑さを感じさせている。
その日も暑かった。山頂の日陰で彼女が来るのではないかと思って待っていた。しかし、月曜日なのに彼女は姿を見せなかった。私は、がっかりして下山にかかった。いつも彼女と別れるところに来たとき、ふと彼女が帰って行く道の方に行ってみた。かなり険しい道を下りて行くと、下の方からせせらぎの音が聞こえた。崖の下に川があり、その先から滝の音が聞こえている。川まで下りて行くと、滝が見えた。高さ5mほどの高さから、水が流れ落ちている。滝つぼには、豊かな水があり周囲は岩場と砂浜になっている。そこの岩場に衣類が置いてあった。
私は、おそるおそる滝つぼに近付いて行った。そこにいたのは、彼女だった。身体には何も身に付けずに、滝つぼの中で泳いでいた。
 私は、岩陰でゴホンと咳払いをした。その音に気付いた彼女がこっちを振り向いた。
 水から出てこっちにやって来た彼女は、私の姿を見ると、前を隠そうともせず、にっこりと微笑んだ。
 彼女は、均整の取れた美しい体形をしていた。胸は豊かではないが、きれいな形をしていて、小さな乳首が私の目に眩しかった。
 彼女が言った。
「今日は、暑いでしょう。それで山に行くのをやめて、ここで泳ぐことにしました。ここは私の秘密のプールです。一緒に泳ぎませんか。」
 私は、すぐに衣類を脱いで、水に入ることにした。彼女が全裸なのだから、自分も下着まで脱いだ。
           ―続く―







2026/04/29 4:09:19|小説「蛍」
蛍―02―
蛍―02―

 私は、話を続けた。
「本当に景色の良いところですね。」
「そうです。四季折々に景色が変わりますから、何度登っても飽きません。」
「この山にはよく登るのですか?」
「えゝ、週に2,3回は登ります。」
「近くにお住まいですか?」
「そうですね、あのあたりに住んでいます。」
 彼女は、北の山の間の方を指さした。
「それじゃあ、僕が降りる方向と逆じゃないですか。」
「大丈夫です。麓の道を歩くのは慣れていますから、駐車場のわかるところまではご案内します。」
「すみません。」
 私は、申し訳ない思いで丁寧に頭を下げた。
「これをいかがですか?」
 私は、リュックからビスケットを取り出すと、彼女に差し出した。
「ありがとうございます。遠慮なくいただきます。」
 そう言って、ビスケットを受け取った。私がビスケットを食べると、彼女もそれを口に入れた。
 30分ほど休憩した後で、彼女が「じゃあ下りましょうか。」と言った。
 私は、リュックを背負うと、彼女の後ろから着いて歩いて行った。彼女の足取りは軽やかだった。途中に急な岩場もあるのだが、彼女はどんどん下りて行った。私は、必死に着いて行った。ときどき彼女は後ろを振り返り、笑顔で私の様子を見て、私が追い着くのを待っていた。
 1時間ほどして、かなり下山したとき、下の方に駐車場が見えた。
「あそこに駐車場が見えています。この道を真っ直ぐ行けば、駐車場に行きます。私は、ここでお別れしますが、気を付けて行ってください。」
「ありがとうございました。助かりました。僕は、三嶋と言いますが、お名前を伺っていいですか?」
「山野と言います。」
「またお会いしたいですね。」
「そうですね。楽しみにしていますわ。」
 彼女はそう言うと、私と違う方の道を下りて行った。私は、彼女の後姿が見えなくなるまでずっと見ていた。
 帰りの車の中で、私は彼女のことを考えていた。
 その日から、彼女に会えるのが楽しみになって、毎日のように山に登った。
 やっと彼女に会えたのは3日後だった。山頂で休憩していると、人の気配が感じられた。振り向くと、木々の茂みの間から彼女の姿が現れた。
           ―続く―







2026/04/28 7:28:23|小説「蛍」
蛍―01―
蛍―01―
 
 私は、川の傍に佇んで、飛び交う蛍の光を眺めながら美紀との思い出に浸っていた。彼女がどうしているのだろうかという思いが、今もって私の頭から離れない。
 それは数年前のことになる。
その日は朝から良い天気だった。木々の新緑が鮮やかで、その間を通り抜けて来たそよ風が心地よく山間を歩いて登る私の頬を撫でていく。頭上からは、まだ上手に鳴けない鶯の不器用な囀りが聞こえている。麓の方を見ると、海が見える。
 標高700メートルほどのこの山は、前には海が広がり、後ろには山が連なっている。
 私が、山登りを始めようと思ったのは、会社を定年になって暇だったからである。今までは、けっこう忙しい思いをしていたが、急に時間ができると、その時間を持て余すようになった。たまたま図書館で探していた本に、「初心者の山登り」があって、パラパラとめくっていたら、近くの山の紹介があったので、登ってみようと思い立ったのである。
 妻とは、数年前に離婚していた。
ある日、「あなたが会社勤めをしている間は、あなたに尽くしてきた。これからは自分の人生を歩んで行きたい。」と言った。しばらく説得したが、彼女の意思は固いようで、私は離婚届に判を押した。
2時間ほどかけて山頂に着いた。
途中にちょっとした岩場や鎖場の急登があって身体は汗ばんでいたが、遠く南には海が広がり、北側には連山の緑が広がっている。その景色を見ていると、今までの疲れも汗のことも忘れていた。
 山頂で、握り飯とお茶を飲んでしばらく休憩してから下山し始めたとき、分かれ道に来た。私は、どっちに行くのか迷った。登るときは、ひたすら上に向かって行けば良いので迷うことはないが、下りは幾つかの道があるようで、間違えれば麓に置いてある車に辿り着けない。
 途方に暮れて、しばらく立ち止まっていた。その時、下から赤いシャツにブルーのリュックを背負った若い女性が登って来た。
 私は、おずおずと彼女に聞いた。
「すみません、駐車場のある登山口に下りるには、どっちを行けば良いでしょうか。」
 彼女は、「あっ、こっちの道です。私が、ご案内しますわ。」と言った。
「でも、これから山頂まで登るのでしょう。それじゃあ申し訳ないですから、下りるついでで良いですからお願いします。」
 私は、彼女と一緒にもう一度山頂に引き返すことにした。
戻りながら、私が言った。
「この山に登るのは今日が初めてなのです。」
「そうですか、運動にはちょうど良い高さの山なので、私はなるべく登るようにしています。」
 10分ほどで、再び山頂に着いた。よく見ると年齢は30歳くらいだろうか小柄な可愛い感じの女性だった。
           ―続く―