夜の訪問者−08−
光義は、初めて聞くあの世の世界の話を興味深く聞いている。 「ええ、恨みの残して死ぬと大変なのよ。でも、そうでなくて天寿を全うして死んだ人は幸せだわ。年金は出るし、蓮の花の上でゆったりと暮らしているのよ。」 「ふ〜ん、それじゃあ幽子だって恨みを晴らせば良い生活ができるんだろう?」 「そうね、私は騙された以外にはそんなに悪いことはしていないから恨みさえ晴らせば、きっとあの世で成仏できると思うわ。」 「そうか、それじゃあ、あいつ・・・、おっとっと名前も聞いていなかったな。そのあいつに仕返しをしなけりゃな。」 「そうね、あなたにはあいつの名前も言っていなかったわね。あいつは黒岩建設の部長、と言ってもつい先日部長になったばかりなんだけど、黒岩利之って言うの。私に何をしたかは、この間話したとおりだわ。」 「そうか、黒岩利之だな。ところで、どうすればいいんだろう?」 「それをあなたに考えて欲しいのよ。」 「冗談じゃないぜ、俺は、そいつに何の恨みもないんだぜ。なんで俺がそんなことを考えなくちゃならないんだ。」 「あらっ、それはないんじゃない。あたしは、あんたが飢え死にしそうなときに、食事を運んで来てあげたのよ。もしあたしが食事を運んで来なきゃあ、あんたは今頃この布団の中で飢え死んでいるのよ。」 「そりゃあ、そのことについては感謝しているよ。でも、それとこれじゃあ問題が違うじゃないか。食事は昨日、今日のことだけど、お前の恨みを晴らすかどうかは一生の問題だからねえ。」 「あらっ、同じだわ。どっちも人の生死に関係することだもの。」 「う〜ん・・・・・」 光義は、返事に困ってうなった。結局その夜も、2人は問題解決の糸口さえ掴むことができないまま、明け方を迎えることになった。 −続く− |