赤い糸・白い糸−40−
「おっ、こりゃあ、難しいや。変な突起が邪魔をしてなかなか難しいよ。」 「あっ、こっちもです。結ぶに結べない状態です。」 二人の神様が赤い糸と白い糸を引っ張って来て、お互いに悩んでいる。見ると、両方の糸にコブのような突起があって、結ぶのを困難にしていた。 その頃、地上では・・・・・
「ならん、絶対にならん!」 青年の前で怒鳴っているのはその父親である。 「でも、僕には彼女しかいません。お父さんが何と言おうと僕は彼女と結婚します。」 「許さん。相手の父親を誰だと思っているんだ。この前の選挙で、こっちの対抗馬で邪魔をした川城の娘だぞ。俺に煮え湯を飲ませるような思いをさせた男の娘なんて、絶対に許さん。」 青年は、父親の部屋のドアを勢いよく閉めると部屋から出て行った。 「駄目よ、沙織。お父さんが絶対に許してくれないわ。だって、この前の選挙では結城さんとお父さんは激しい選挙戦、向こうはありもしないゴシップを流してお父さんの名誉を傷つけたのよ。」 結城健治と川城沙織の父親は、町内で元々仲が良くない。互いに同業の建築業を営んでいる商売敵である上に、新人として先の町会議員選挙に立候補、健治の父親は落選、沙織の父親は最下位で当選したのだった。 この町の選挙戦は、いつも激しい。しかも16人の定数に17人が立候補した。1人だけが落選する選挙は嫌が上にも激しくなる。 財産を投げ出すほどのお金もつぎ込んでの選挙戦だっただけに、二人の間には大きなしこりが残っていた。 健治と沙織は、高校時代からの知り合いである。健治が野球部のピッチャーで活躍、沙織はマネージャーとして入部して来た。健治の方がひとつ先輩である。 健治も沙織もよく勉強ができた。健治は東京の大学に、沙織は地元の大学に進んだが、高校卒業後久し振りの同窓会で再会してから交際を始め、その後もメールのやり取りをして交際を深めて行った。大学を卒業すると、健治は父親の後を継ぐために父の経営する建築屋に入り、沙織は隣の市の会社に勤めた。 二人は、それぞれの父親の仲が良くないことは百も承知であったが、お互いを想う気持ちを抑え切れずに将来を誓い合い、共に両親の許可を得る努力をしようと話し合ってのことだった。 お互いが親に話した翌日の公園、二人がベンチに座ったまま話をしていた。 「やはり反対されたよ。」 「私も、そうなの。まだ父には、話していないのだけど、お母さんからして反対なのよ。困ったわねえ。」 「でも諦めないよ。僕は、沙織のことが好きなんだ。」 「私だって、健治さんのことが好きよ。」 「でも、困ったねえ。駆け落ちしてもいいけど、僕も今会社を辞めたら、親爺一人じゃとてもやって行けないと思うんだ。僕の新しい技術や経営手法でないと、ここのところの不況でこの先大変なんだよ。」 「そうねえ・・・・・」 二人は、解決策も思いつかないまま黙り込んだ。 その後も何度か機会を見付けては、二人で親を説得しようとしたが、それぞれ頑として聞き入れなかった。 二人とも、このままではいけないから駆け落ちでもしようかとも言ったが、現実を考えるとそれもできなかった。悶々とした日が続き、すぐに半年が過ぎて行った。そして健治がとうとう言った。 「よし、こうなれば最後の手段に訴えることにしよう。」 −続く− |