春の行方−02−
新幹線が東京駅に着いた。 光太郎は、高校の修学旅行で来たことはあったが、これから働く町かと思うと、まるで感慨が違って来る。電車を乗り換えてそのまま松戸にある会社の独身寮に向かう。 寮は1DKの間取りで、一通りの家具などは揃っていたから、寝具や食器などを揃えれば良いだけである。 交番で尋ねながら寮に着いたときには、夕方になっていた。管理室で鍵を受け取り、3階にある部屋に入ろうとしたとき、廊下を一人の若い女性が近付いて来た。 「こちらに入居ですか?」 「そうです、三永です。」 「私も、今度隣に入居しますの。よろしくお願いします。」 会社案内によると、このマンションは、そっくり会社で借り上げているはずである。 「じゃあ、今度アジア製作所に入社するのですか?」 「ええ、そうです。松島です。よろしくお願いします。」 「もう、引越しは終ったのですか?」 「いいえ、明日荷物が着きます。」 「そうですか、僕も明日の予定です。どうでしょう、これから食事にでも行きませんか。」 「そうですね、私も来たばかりで町の状況がよくわからないのですが。」 「僕もですが、駅の近くにいくつか店がありましたから、行ってみましょう。じゃあ、30分後にここで。」 部屋に入ると、光太郎はすぐに佳津枝に電話をした。 無事に着いたことなどを報告したが、佳津枝は色々と質問したり、月曜日が入社式であることなど、自分の状況を長々と話し始めた。 時計を見ると20分が過ぎていた。 「じゃあ、ちょっと用事があるから。」と言って、光太郎は電話を切った。 着替えをして、廊下に出てみると、既に彼女は廊下で待っていた。 「すみません、家に電話をしていたのですが、母親の話が長くて・・・・・」 光太郎は、自分の嘘に驚いていた。 駅まで10分の道のりを二人は並んで歩いていた。来るときはまだ明るくて気付かなかったが、駅の近くには居酒屋やファーストフードの店、レストランなどのネオンがけっこうたくさんあった。 「お酒、飲めます?」 光太郎が聞いた。 「そんなに強くはないですが、少しなら。」 「じゃあ、居酒屋にしませんか。」 「いいわ。」 二人は、チェーン店の居酒屋に入った。 飲みながら話していると、彼女が松島久恵で、静岡の浜松出身、今回、同じアジア製作所に入社することがわかった。同期入社になる。 背が高く、学生時代はバレーボールをしていたという。光太郎は、自分が高校時代テニスをしていたことなどを話したら、私もしてみたいと言った。 久恵は、出されたビールをゆっくりと飲んでいる。光太郎は、学生時代、先輩に飲まされていたからけっこう飲める方である。久恵がやっと1杯目のジョッキを空けたことには、3杯目を空けていた。 最初は、ちょっとだけのつもりであったが、気が付いたときには9時近くになっていた。 二人は、寮に帰ることにした。途中、久恵がコンビニで明日の朝の朝食を買おうと言い、買い物をしてから部屋に戻った。 部屋に戻ると、母親に無事に着いたことを報告するため、電話をかけた。 −続く− |