夜の訪問者−10−
幽子の恨み相手の利之は、電車に乗り、渋谷で降りると駅前の喫茶店に入った。そこで彼女を待っているようである。 しばらくして彼女がやって来た。 「利之さんし待った?」 「いや、今来たばかりだよ。」 「そう、良かったわ。」 二人は、コーヒーを飲むと、店を出た。 「ねえ、映画でも見に行こうか。」 「ええ、いいわ。」 二人は、仲良く手を繋いで歩いている。光義は、どうすれば二人の邪魔ができるかと考えていた。しかし、どうして良いかわからず、結局その日は諦めて帰って行った。 その夜、現れた幽子がいきなり言った。 「あんたって、本当に役立たずね。何にもしなかったじゃないの。」 「なんだ、見てたのか。」 「そりゃあ、見てたわよ。昼間は姿こそ現わせないけど、見ることはできるのよ。」 「だけど、どうして良いかわからなかったんだよ。」 「それにしても、あんたはもうちょっと頼りになる人かと思っていたけど、情けないわねえ。」 「そんなに言うなよ。俺だって、幽霊の手助けをするのは初めてのことなんだぜ。」 「わかったわ。じゃあ、食事をしてから相談しましょう。」 そう言ってから、幽子は食べ物と酒の入った包みを開いた。今日は、築地の何とかいう老舗料理屋の和食である。酒は新潟の銘酒、次第に舌の肥えて来ている光義も、舌鼓を打ちながら食べて飲んだ。 しばらくは飲みながら食事をしていたが、幽子が真剣な顔をして言った。 「ねえ、あなたが幽霊にならない?」 光義はびっくりした。 −続く− |