朧月夜−20−
「どうしたの?」 泣いている様子の友紀に、私が聞いた。 「・・・・・・・・・・・・・・・」 「話したくなければ、話さなくてもいいんだけど。」 しばらく沈黙が続いた後で、友紀がポツリポツリと話し始めた。 「実は、私、会社のある人とこの間結ばれました。」 「若い人?」 「ええ、まだ30代前半でしょうか、係長です。前から私のことを好きだって言ってくれていました。」 「君は、その人を好きなの?」 「ええ、身体を許したくらいですから、嫌いではありません。」 「彼は、結婚を望んでいるの?」 「ええ、そのつもりで付き合って欲しいって言われました。」 「君の気持ちはどうなの?」 「ええ、まだ迷っています。と言うのも、あなたと比べると彼のセックスは未熟です。私の身体は、彼のセックスでは満足できなくなってしまっているのです。」 「うん、でもそれはこれからだよ。僕だって、長い年月を経て今のテクニックを身につけたんだ。」 「いいえ、私にはわかるのです。彼は、決してあなたほど上手になることはありませんわ。彼は、あなたのとはまるで違って、自分中心のセックスしかしないのです。あれでは、どんなに歳月を経ても駄目ですわ。」 「他の面ではどうなの?例えば、日常の生活とか・・・」 「親切ですわ。でも時折、気がつかないというか、自分勝手なところが見受けられます。そこもちょっと不安の種です。」 「でも、結婚となるとセックスが全てではないしね。結婚におけるセックスと、楽しむためのセックスでは本質的に違うんだ。子供を産むためのセックスは神聖なものだし、楽しむためのセックスでは楽しむことに全力を傾けなければならないんだよ。」 「結婚したからって、子供を産むのは2人か3人でしょう。子供を産み終わったらずっと楽しむためのセックスが必要だわ。それなのに心のこもったセックスのできない人が相手では寂しいわ。」 「結婚は君が自分で考える問題だからね。でも、人生で幸せを見つけることは大事だよ。それも将来に向けてね。」 ―続く― |