春風の唄−2−
「君の趣味は、何?」 私が、裕美子に聞いた。 「学生時代は、テニスをしていました。スポーツは何でも好きですが、今は、忙しくて何もできないんです。」 「そう、僕も最近テニスを始めたけど、我流だから一向に上手にならなくて。」 「そうですね。基本は、やはり教わった方が良いかも知れません。」 言葉使いは丁寧だが、言うべきことははっきり言っている。 「君が、教えてくれないかな。」 「いいですわ。土日はいつも空いていますから、お相手できますわ。」 「僕が、中野でテニスコートを取れるから、今度の土曜日に来ない?」 「いいですわ、私も運動不足で困っていたんです。中野までなら、電車で30分もあれば行けますから。」 「じゃあ、今度の土曜日にコートを予約しておくよ。午後がいいね。念のため、君の電話番号を教えてくれないかな。予約が取れたら連絡するよ。」 私は、彼女の電話番号を手帳にメモした。 それから二人でしばらく、とりとめのない話をしていた。日頃はおとなしそうな感じであるが、お酒のせいもあってよく話をするようになった。話をしていると、彼女の知性というか、利発なところが感じられる。いろいろな知識が話の中に伺える。 土曜日は、春霞はあるものの、朝から温かい日だった。テニスコートに早めに着いた私は、クラブハウスで彼女が来るのを待っていた。彼女は、約束した1時ぴったりにやって来た。純白のテニスウェアに、ピンクのカーディガンを羽織っている。 早速、私達はコートに出て、ストロークを始めた。彼女の短いスコートからすらりと伸びたやや筋肉質な足が、春の日に眩しい。私は、彼女に健康的な色気を感じた。動く度に、ときおりスコートから覗く下着が艶めかしさを感じさせる。 ラケットを持ってコートに立った彼女は、先日の夜の彼女とは別人のようであった。先日は、ちょっとおずおずとしたようなところがあったが、コートでの彼女は実に軽快できびきびとしている。私の打つ球の先に先にと動き、その動きにも無駄がない。スポーツの勝敗は、運動神経や筋肉の強さの影響も大きいが、最終的には勘と頭脳である。彼女には、天性のような勘と頭脳が備わっているのではないかと思う。 最初、彼女とストロークを続けていたが、15分もすると私は彼反の元気さについていけなくなった。私は、しばらく我慢して続けていたが、とうとう彼女に「少し休もう。」と言った。 彼女は、笑顔で「いいですわ。」と言って、私の方に来て、私のフォームの悪いところを直してくれた。テークバックがやや遅いこと、テークバックのときの腰の回転が十分でないことなど、私のフォームの欠点をよく見抜いて、適切なアドバイスをしてくれた。 ―続く―
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