赤い糸・白い糸−10−
次に会ったとき、慎吾が聞いた。 「ねえ、この前の話、考えてくれた?」 「ええ・・・・・、でもなかなか決心がつかなくて。」 「僕のこと、嫌いなの?」 「いいえ、そんなことないわ。」 「じゃあ、いいじゃないか。結婚しようよ。」 「でも・・・・・」 煮え切らない恵子の態度に、慎吾はちょっと怒っているようだった。慎吾が畳み掛けるように聞いた。 「じゃあ、どうするの?このまま待っていろって言うわけ?」 「お願い、もうちょっと待ってよ。仕事のこともあるし。」 「待つって、いつまで待てばいいの?」 「そうね、もうちょっと。」 結局、それ以上聞くこともできず、慎吾は話題を変えた。 その後、しばらくは自分からは聞かず、恵子が自分から言い出すのを待つことにした。しかし、一向に話すような気配はない。 そんなある日、恵子は常務に呼ばれた。 「望月君、沢村君とはどうなったね?」 「はい、お付き合いしています。」 「そうか、それでうまく行きそうかね?」 「ええ、プロポーズされました。」 「ほ〜っ、それは良かった。おめでとう。」 「いえ、それがまだお受けしていないんです。」 「えっ、それはどういうことかね。嫌ならはっきり断わっていいんだよ。何も僕が紹介したからって、結婚しなきゃならないって法はないんだからね。」 「ええ・・・・・」 「もし君が嫌なら、彼には別な女性を紹介しなくちゃならないしね。」 「・・・・・」 「まあ、いいや。どっちにしてもイエス、ノーは早めに決めないと、お互いを縛るだけ縛って結局は無駄な時間を費やしただけにしかならないからね。」 「はい。」 次のデートのときである。恵子が切り出した。 「私、この前のお話をお受けしたいと思います。よろしくお願いします。」 慎吾の顔が輝いた。しかし、彼は恵子が常務の「別の女性を紹介する。」という言葉が決定打になっていること知る由もなかった。
恵子が慎吾のプロポーズに返事をしている頃、雲の上では神様たちが次のような会話を交していた。 「岩手の神様は、本当に動きが遅いよなあ。さっきも赤い糸を持ってウロウロしていたぜ。」 「それに比べて大阪の住吉さんはせっかちだからなあ。岩手さんが赤い糸を持ってウロウロしている間に5、6本の白い糸を持って来ては引っ込め、持って来ては引っ込めしていたよ。とうとう痺れを切らしていい加減にしろって言ったところで、やっと結ぶことができたんだ。」 「まあ、いずれにしても無事に結べて良かったよ。」 −続く− |