日本から遠く離れたブラジル。
様々な試練を乗り越え、たどり着いた憩の園で過ごす日系人の方々。
そんな入園者の俳諧と物語をお届けします。
はるか昔 この世に生まれた
富士山のふもと
その風景を堪能してTOSHIMI は、93 年前、富士山のふもとに生まれたことを
誇りに思っている。 富士山は、本州で最も高く、
世界でも最も美しい風景の一つに数えられる。
「12 歳の時に日本を出た。父の JUN・Y はブラジルに移住するために
家族皆を説得した。この国では霜も降りないし、
土地がとても良いんだ、って言ってね。」
思い起こすのは、身を粉にして働いた記憶ばかりだ。
新しい仕事を求めて移動したこと、内陸部の農場で汗を流して働いたこと、
グアルーリョスからサンパウロに、サトウキビを運搬するために
3 万クルゼイロで購入したシボレーのトラックのこと。
「ここブラジルで結婚した。でも、日本に嫁さんを迎えに
行かなきゃならなかった。それがあの頃の習慣だったんだ。
彼女のことは写真でしか知らなかった。 わりと美人だったよ。
父が彼女の家族を知っていたんだ。5 人子供ができた。」
今の TOSHIMI の厄介事は、仕事を続けたいという思いに、
体がついていかないことだ。
「爺さんになってくると、何だかのろまになってしまうね。もう働けないな」
Y TOSHIMI