病院船に20年度にも ヘリ搬送、応急処置 !。政府は2020年度にも、南海トラフ巨大地震などの大災害が起きた際、海上自衛隊の艦船を「災害時多目的船(病院船)」として運用する方針を固めた。被災地の医療機関が被害を受けた場合、洋上から病院機能をバックアップする。1〜2隻投入へ 政府は災害時の病院船として、負傷者を運ぶ大型ヘリコプターが発着艦できる海上自衛隊のいずも型と、ひゅうが型の両護衛艦、おおすみ型輸送艦の計7隻を見込んでいる。このうち本来の任務に当たったり、整備を受けたりしている艦を除く1〜2隻を被災地に投入する。手術もできる艦内の医務室だけでなく、甲板に医療機材やベッド、陸上自衛隊の野外手術システムを持ち込み、「仮設病院」とする。医師や看護師らでつくる災害派遣医療チーム「DMATディーマット」などが負傷者や患者の応急処置を行う。 病院船は、被災地外の病院に運ぶまでの「中継地」(内閣府幹部)と位置づけ、入院はできない。交通網が寸断されて陸路で負傷者らを運べない被災直後に、被災地と外部を空路でつなぐ医療活動の拠点とする。病院船は、東日本大震災をきっかけに導入が検討されてきた。震災当時は岩手、宮城、福島の被災3県の計380病院のうち300の病院が全壊・一部損壊し、患者の受け入れを制限したところも少なくなかったためだ。米国や中国、ロシアは病院船に特化した艦船を保有している。しかし、新たな病院船は建造費や維持管理費がかさむため、国内での導入は断念した。カーフェリーなどの旅客船の活用も、借り上げに時間がかかるといった理由で見送った。大災害が起きれば、内閣府が都道府県からの要請を受け、病院船を派遣する方向だ。現時点では、病院船となる海自艦艦長とDMATの指揮系統などは固まっていない。内閣府は今後、詳細を詰めたうえで、病院船の運用マニュアルに盛り込む。今月中にマニュアルの骨子案をまとめ、実際に艦船を用いた訓練などを重ねて19年度中に完成させる。海自艦船は、11年の東日本大震災や16年の熊本地震でも派遣された。当時は、物資輸送や被災者の入浴が主な目的だった。 |