妖精の歌−04−
富士急ハイランドに着いたときには、昼前になっていました。平日の遊園地は空いていて、中を見るのも乗り物も待つ必要はありませんでした。コーヒー・カップやメリー・ゴーランドなど、次々と乗ります。昼食時になりますが、先程蕎麦を食べているのでそのまま乗り物に乗り続けます。 「ねえ、ジェット・コースターに乗ってみましょうよ。」 美鈴が言います。 「うん。」 そうは言うものの、私は生返事です。実は私は高いところが大嫌い、怖いのです。そんな雰囲気を察してか、美鈴は余計嬉しそうに言いました。 「さあ、こっちよ。誰も並んでいないわ。すぐに乗れるわ。」 私は、そんな美鈴に手を引かれながら、ジェット・コースターの方に歩いて行きました。 私は、美鈴に手を引かれるようにして、とうとうジェット・コースターの前まで来てしまいました。前に数組の人達がいますが、これでは順番を待つまでもなくすぐに乗れそうです。向こうを走っているジェット・コースターからは、キャーキャーという叫び声が聞こえています。その声を聞いただけで怖じ気づいてしまうのですが、美鈴はすぐ側にいるので怖そうな素振りもできません。 やがてコースターがこっちにやって来て、ゴトゴトと音を立てて目の前で停まります。前の若者が、一番前に座ったので、私はちょっとホッとします。 「一番後ろが空いているわ。あそこにしましょう。」 私は、また美鈴に手を引かれて一番後ろに座ります。アームが降りてきて膝が固定され、車両が発車します。ゴトゴトとゆっくりと最初の坂を登って行きますと、私の前のアームを掴んでいる手に力が入ります。 坂を上り詰めたところから、最初の急降下です。車両の急降下とともに、スーッと胃袋が突き上げるような感覚が私を襲います。横の美鈴はキャーッといいながらも、嬉しそうです。私は、脇目も振らずに必死でアームを掴んでいます。最初の急降下が終わり、次の登りに差し掛かって車両のスピードが落ちたところでホッとする暇もなく、次の急降下です。私の全身はすっかり固くなっていますが、美鈴は私の腕に掴まって楽しそうにしています。そんな急降下が数回あって、コースターは元のところに戻ります。 「アー、楽しかったわね。」 美鈴が、本当に楽しそうに言います。私は、黙って頷いたものの、心臓はまだ高鳴ったままでした。 ―続く― |