遭難記−11−(最終回)
歳月は流れて行き、俺はすっかり村の生活に溶け込んでいった。その間、モナはすっかり俺の女房のようになっていたし、ときどき村の女達も俺のところに忍んでやって来た。彼女達は、口を合わせたように、俺のセックスの方が村の男達より上手だと言った。モナは、俺が他の女達との行為を気にしていないようだった。それが、女の長として当然なことと思っていたようだった。 海に面したところに山があった。俺が遭難して、煙によって村を見付けた高さ300mほどの山である。俺は、釣りに来たときたまにこの山に登った。浜には、俺が乗っていた飛行機があった。かなり腐食も進んでいるのだろうが、遠くからは太陽に輝いて見えた。飛行機を見ていると、日本での日々が懐かしく思い出された。特に懐かしかったのは、食事である。ここでは魚や肉、芋や野菜などはあったが、味付けは塩だけである。慣れたとはいえ、物足りなさは否定できなかった。 あるとき、モナが自分のお腹を指差して、「赤ちゃん」と言った。妊娠したと言っているのである。避妊はしていなかったので、俺の子供に違いなかった。村の娘にも妊娠しているのがいたが、誰の子供かはわからない。産まれてくれば、顔付きなどからわかるだろう。 モナは、男の子を産んだ。出産は、モナの祖母や母親が面倒を見た。 3年の歳月が流れた。男の子は1歳になってよちよち歩きを始めていた。その間に、俺と関係を持った女達から、俺の子供ではないかと思われる女の子と男の子が生まれていたが、父親が誰であるかは気にしていないようだった。 ある日、俺はモナと息子を連れて、海の近くの山に登った。3人で持って行った芭蕉の葉に包んだ芋や焼いた魚の入った弁当を食べていたとき、息子が沖を指差した。見ると船がいた。ヨットのようであまり大きくはない。船は、海岸に近付いて来た。 俺は迷った。故郷の日本に未練がないわけではない。すっかり忘れていた事業のことを思い出した。今、火を燃やして合図すれば彼等は気付いてくれるだろう。助けを求めれば、助けてくれるだろうと思う。 迷っている俺を心配そうにモナが見詰めた。その目と、あどけなく遊んでいる息子を見たとき、俺の気持ちは決まった。 俺は、モナと息子の手を取り、山を下りて、そのまま真っすぐに村に向かって帰って行った。 南国の夏の暑い日差しが俺達を照らしていたが、それさえ気持ち良く、俺の気持ちは晴れ晴れとしていた。
追記 30年近い歳月が流れた。俺は、人々の支持を受けて村の長になった。それまでの間、たくさんの女達との交わりがあり、自分の子供が何人いるのかよくわからなかった。 そんな女達を仕切っているモナは、堂々とした立派な体格になっていた。 ―完― |