夜の訪問者−21−
2日後、光義がカードを持って銀行のキャッシュコーナーで残高照会をすると確かにお金は振り込まれていた。利之が、こっちのペースに嵌まりつつあることがわかる。 その夜やって来た幽子にそのことを話した。幽子は、嬉しそうだった。 「もうひと押しね。何とか、あいつを刑務所に入れてやらなくては。」 「うん、お前も幽霊で出ているのか?」 「ええ、出ているわ。だんだんあいつも参って来ているようよ。最初は空威張りをしていたけど、最近ではそれも言わなくなったわ。」 「婚約者とデートしているときに出てみたら?」 「それが、なかなか機会がないのよ。あいつ、私とのときには積極的に夜に誘っていたけど、婚約者に対しては昼間ばかりなの。夜、クラブなんかに飲みに行くこともあるけど、なかなか二人きりにならないのよ。あたし達幽霊は、大勢の中とか明るいところが一番苦手なの。」 「そうか、じゃあ、俺がやって見るかな。」 「どうするの?」 「俺なら人間だから何でもできるさ。まずは二人がデートしているところに顔を出すんだ。それだけで、あいつはビビると思うぜ。」 「危ないことはやめてよ。この前も酷い目に遭ったなかりじゃない。」 「まさか、あいつだって彼女の前じゃ暴力も振えないだろう。それにすぐに姿を消すよ。」 早速、それを行動に移した。幽子からの情報でデートのスケジュールがわかる。幽霊は、姿は見せなくても、恨みのある宙に彷徨いながら人間を観察はできるのである。 土曜日、光義はデートをしている利之の前に現れた。そして目を合わせると、「やあ、元気かい?」とだけ言って、その場を離れた。 「あの人誰?」と聞く婚約者の女性の声が聞こえたが、その後利之が何と言ったかは、光義には聞こえなかった。 −続く− |