妖精の歌−14−
私は、切々とした想いをメールで美鈴に伝えます。しかしなかなか上手に表現できません。それで思い余って、小説形式で書いて美鈴に送り続けていました。 その後も私はどうすれば美鈴に会えるだろうかと、考え続けていました。そんなある日、妻が、今度海外旅行に行きたいと言いました。友達と一緒に香港に行くと言うのです。 私は、すぐにそのことを美鈴に伝え、そのときに会えないだろうかと相談しました。 早速、美鈴から返事が来て、何とか都合をつけたいと書いてありました。それはまだ一月先のことですが、私の胸は躍っていました。このときから、私の気持ちは再び明るくなっていました。 人間は、本当に不思議です。美鈴を知る前は、こんなに感情の起伏を覚えたことはありませんでした。この年齢になって、物事に無感動になってしまうのは自然のことかもしれません。しかし、美鈴という女性を知ってからは、小さなことで喜んだり、あるいは悲しんだりして、まるで少年のような気持ちです。会えないとなると寂しく、会えるとわかると楽しい気持ちになるのです。私のそんな気持ちは、日々の生活態度にも表れるようで、社員の女の子達からよく「課長、何かあったのですか。」と聞かれたりしました。それでも家庭においては、なるべく態度には表さないようにしていました。 約束の日、私は二人でどこに行こうかといろいろ思案をします。勿論、美鈴にも、どこがいいだろうかと相談します。相談の結果、結局、二人は週末に一泊で西伊豆に行くことにしました。私が中央高速を走って美鈴を迎え、そこから一緒に伊豆に向かうのです。 約束の土曜日が来ました。私は遠足の日の幼稚園児のように、朝早く目を覚ましました。日が出たばかりでまだ十分に早いのですが、少しでも美鈴の近くに行っておきたい、そんな気持ちから車を走らせます。東名高速を降りて、美鈴と出会う約束の新富士駅に着いたときは、まだ1時間も前でした。私は、そこで車を停め、中で一寝入りして時間を待ちます。約束の時間10時ピッタリに美鈴はやって来ました。遠くから美鈴を見つけた私は、クラクションを鳴らして合図します。すぐに気がついた美鈴は、大きく手を振りながら走ってやって来ました。 「やあ!おはよう。」 「お待ちになりまして?」 「うん、ちょっと早く着いてね。」 一か月振りの再会に、二人ともとても嬉しい気持ちを抑えられません。美鈴が、スカートの裾を翻しながら車に乗り込みました。 ―続く― |