男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2020/01/12 15:49:02|小説「嘘」
嘘―44―
嘘―44―
 
 見送りからの帰りの電車の中、私は、光佑さんのプロポーズについて考えていました。私も、光佑さんのことを好きでした。しかし、結婚を承諾するためには、幾つかの障害がありました。
 一番大きいのは、叔父様との関係でした。このまま関係を続けていたのでは、とても結婚などできません。もし叔父様の誘いを断れば、叔父様からの経済的な援助を断られるかも知れません。それは、私のことだけでなく、お母様にも影響することでした。
 もうひとつは、お母様のことでした。お母様は、家柄のことにこだわりを持っておられました。それは、子供の頃から言われたことで、結婚するならそれなりの家柄の人にしなさいした。光佑さんのお家は、大きいとは言え農家です。お母様がお許しになるとは思えませんでした。また、美知さんや響子さん、希美さんとのことも気になります。そんなことから、私は次第に、どうすべきか悩むようになりました。今まで、何度かお母様には嘘を言いましたが、光佑さんには、嘘をつきたくありません。
 1週間後、梅乃さんが、「お嬢様、外国からお手紙ですよ。」と言いながら、手紙を持って来ました。光佑さんから、無事にニューヨークに着いたとの航空便でした。光佑さんは、毎週のように手紙をくださいました。そこには、アメリカでの生活のことや、あちこちを旅行したことなどが書いてあり、写真も添えてありました。手紙を受け取る度に、私は、プロポーズに対して何と返事をしようと悩みました。
 4年になっていたので、卒業論文も書かなくてはなりません。選んだテーマは、何冊か読んでいたシェークスピアに関するものでした。おそらく、これまでにたくさんの人が選んだテーマでしょうけど、改めて新しいテーマを探す気にもなれませんでした。
 論文を書いていても、光佑さんのことが頭に浮かんで来ます。私は、それを振り切るように、論文を書くことに没頭しました。
 叔父様からは、相変わらず月に一回ほどのお誘いがありました。その度に、お断りしなくてはと思うのですが、いざ面と向かってしまうと何も言えずに、黙って叔父様の要求に従ってしまうのでした。美知さんや、響子さん、希美さんとの交際も続けていました。男性との愛の行為にも、女性からの愛の行為にも反応する私の身体は、一体何なのだろうと思うこともありましたが、どちらにも違和感は覚えることはありませんでした。
 一方、真貴子さんは、秀人さんとの交際を続けていました。秀人さんも、希望する企業に就職が決まったようです。貴美子さんは、将来、彼と結婚するかも知れないと言いました。まだプロポーズは受けていないけど、彼からずっと交際して欲しいと言われていたのです。身体の関係ができたことを伺わせるようなことも言っていました。
 大学も4年生になると、女子学生達の間でも、男性との関係を公然と話す人もいました。コンパで知り合った大学生や、飲んでいて知り合ったサラリーマン、スポーツで知り合った人などいろいろいました。私は、そんな彼女達の話をただ黙って聞いていました。
               ―続く―





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