赤い糸・白い糸-70-
「やっぱり無理でしたねえ。」 「そうですね、今の世の中はお金がなければ生活して行けないですものね。」 「この不景気、三郎のようでなくても、失業者とかが多いから大変ですよねえ。」 「そうですね、結婚しないだけでなく、できない人も多くなりそうですね。」 「これって政治の貧困でしょうか?」 「政治の責任もあるけど、真面目に働こうとしないのもいるのでしょうね。」 「そうですねえ、だんだん人間が弱くなっているような気がするのですが、いかがでしょう?」 「僕も、そう思います。景気の良い時代に育った人は、ちょっとした逆境に弱くなっていますよ。」 「そうは言っても、結婚してくれる人間がいないことにはこっちも生活が大変です。ボーナスも減ったんじゃ、子供にお土産のひとつも買って帰れなくなってしまう。」 「さあ、こうしてもいられません。あと8日で今月も終り、頑張らなくては。」 そんな話をしていた神様達は、また持ち場に戻って行った。
「秋田さん、こちらは25歳OL、二人姉妹の妹、早く白い糸をお願いします。」 「はいはい、新潟さん。これはいかがでしょう。28歳のサラリーマン、年収は350万円、これなら良いでしょう。」 「よっしゃ、結んじゃいましょう。」 今まで、いろいろなトラブルのあった事例を紹介して来たが、多くはこんな風に順調に結ばれているのである。ただ「○○君と、△△さんは家族や友達にも祝福され、幸せな結婚をした。」というような順調な話は読む方も面白くないので、問題のある事例を紹介して来ただけである。 神無月も月末になると、神様達もノルマに追われる。順調な話がどんどん結ばれて次々と幸せなカップルが誕生して行っている。 -続く- |