男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2019/07/26 5:32:09|小説「幽霊の郷」
幽霊の郷-18-

幽霊の郷-18-

 

 お盆の2日目も、ゆう子は感情が不安定な感じだった。とにかく喜怒哀楽が激しい。やたらと光司にべたべたしたかと思うと、急に沈んで無口になったりする。そんなときのゆう子は、表情も暗い。以前、光司にはは恋人もいたが、彼女とはたまにしか会わなかったので、今回のゆう子のようなことはなかった。あったのかもしれないが、少なくとも光司の前ではそんな態度は示さなかった。上司のパワハラによる光司の方が情緒不安定になっていて、彼女の方から去って行った。

光司は、ゆう子の態度の変化に戸惑っていた。生理のときに不安定になることは聞いたことがある。人によっては、感情の起伏が激しくなったり、極端な体調不良に陥ることがあるという。しかし今回のゆう子に限っては生理ではなかった。昨日も身体を交えたばかりであるから、それははっきりしていた。

ゆう子の機嫌が良いときは適当にあしらっていたが、黙り込んでいるときは放っておいた。するとゆう子の方から機嫌を取るように近付いてきた。光司は、女がこういう場合は、そうするしかないのだと悟った。

最初に一緒に買い物に行ったときに化粧品を買ってから、ゆう子は朝夕に軽い化粧をするようになっていた。化粧は自分の部屋でしていた。ゆう子は、北側にある6畳の部屋を使っていたが、部屋には光司の入居前から置かれていた古い鏡台があった。光司は、元々色白できめ細かい肌なので化粧などしなくても良いのではないかと言った。夏の日差しの強い中で畑作業などをしているにも関わらず、ゆう子は色が白かった。ゆう子は、化粧をするのは好きな人に対する礼儀だと言った。それを聞いて、光司はまんざらでもなかった。朝起きたときは既に化粧を済ませていたし、夜は風呂上りにしているらしく、化粧をしている姿を見たことはなかった。

広島にいた頃、電車の中で化粧をする女を見たことがあるが、あれは感心しなかった。女は見えないところがあるから神秘的で良いのであって、人前で化粧したのでは狸が化けているところを見ているようで奥ゆかしさが感じられない。

夕方の化粧は、それなりに意味がある。寝るときは薄暗いので、化粧をしていなくても見た目には変わらない。特にゆう子のように若くてきれいな女の場合は、化粧そのものにはあまり意味がないようにさえ思える。しかし、そこには自分の一番美しいところを見てもらおうとする女の強い意思の表示があった。そして、それは男を誘うためのシグナルでもあるのである。

               -続く-






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