人妻−11−
5分ほど遅れて、洋子がやって来た。着替えて来たのだろう、明るい空色のスカートに白い襟の広いブラウスを着て、カーディガンを羽織っている。私は、早速彼女に聞いた。 「飲み物は何がいい?」 「ビールをいただきます。」 私達は、まずビールで乾杯をした。 「いつもありがとう。君には感謝しているよ。」 「こちらこそありがとうございます。」 乾杯を終えて、私はステーキとワインを注文した。洋子も同じものが良いと言う。 洋子は、しなやかにナイフとフォークを使ってステーキを口に運んでいた。食べ終えたところで、洋子が言った。 「部長、今週はお疲れのようでしたね。」 「そうかなあ。」 「特に火曜日は、何度もあくびをなさっていました。」 「う〜ん、そうかなあ。」 「部長、恋人ができたのじゃありません?」 「・・・・・」 「いいのです。私は、それについて何も言う気はありません。でも、部の女性には、部長の一挙手一投足に目を付けているのがいます。それで敢えてこんなことを申し上げました。」 「そうか、ありがとう。気を付けるよ。」 「すみません、余計なことを申し上げました。」 食事が終わったとき、私が言った。 「もうちょっと飲んで行くかい?」 「嬉しいですわ。」 私は以前行ったことがある小料理屋に行った。50代の女将が一人でやっている家庭料理を出してくれる店である。 「あらっ、三宅さん。お久し振りですね。今日は、素敵な女性とご一緒なのですね。」 「うん、うちの会社の川野辺君だ。いつも世話になっているので、今日は謝恩会だよ。」 「お嬢さん、三宅さんってなかなかのやり手でしょう。仕事もできるのでしょうね。私は、会社のことはわからないけど、商売柄男を見る目はそれなりにあるつもりです。」 「そうですね、素晴らしい方です。それに優しいので、女性社員の憧れの的です。」 「そうだと思います。でも、気を付けてくださいよ。こういう人と恋に落ちると、後が大変ですから。」 「はい、肝に銘じておきます。」 そう言って二人は笑った。 ―続く− |