出産は気力と体力だ
そう思った。 陣痛はこれまで経験したことのない、 例えられない感覚だった。
よく、かなりひどい便秘や生理痛に近いというが、 そうとも違う、まさに味わった人にしか分からないだろうと思う。
率直な感想としては、 “痛い"ではなく、"しんどい"だった。
本格的な陣痛がきてからは、 等感覚に唸りと気絶の繰り返し。 次にまたくる陣痛の波から逃げようと、 何度もトイレに這っては、座り込んでいた。 ベッドで仰向けに寝ることが出来ない。 横になって何かを掴んで引っ張って、 旦那と助産師さんに励まされる。 放って置いてほしいのに、 いざ離れそうになると服を掴んで待ってと懇願した。
子宮口が1センチしか開いてなくて、 それでも初めは体力でしのぎ、 4センチになったところで滅入りそうになり、 あと6センチなんて絶対に持たないと嘆きながら、 それでも何十回もの波に耐え、 破水して8センチと言われた時は既に憔悴ギリギリ。 何でもいいから帝王切開してくださいと言おうとしたら、 分娩台に行きますか?と聞かれ、 逃げたい一心で快諾し一目散に分娩台に駆け上った。
何より息んでいいことが嬉しかった。 この後の痛みなんて何ともない、そう自信があった。
以前、読んだ雑誌に、 陣痛は何か大きなエネルギーが身体の内から押し寄せてくる感じ とあったが、まさにその通りだと思った。 強く重たいエネルギーが、ズンとくる。 声を出さずにはいられない。勝手に唸り声が漏れる。
世の中の母は、きっとこれに耐えたというだけで強い。 それだけは冷静に考えていた。
分娩台の上では、子宮口が全開になっていたので、 それからは取り乱すこともなく余裕があったように思う。 ただ、息をすることだけは忘れていたので、 赤ちゃんが危険な状態になっていたらしい。
それでも順調に息みを続け、 頭から最後まで出てきてくれた。
後から知ったことだが、 母体が息をしないので、 赤ちゃんはかなり苦しく心拍数も弱かったようだ。 羊水も飲み込み、どんなにか苦しかっただろう。 それでも出てこようと、頑張ってくれた。 生命とは、なんて強いのか。 あの小さい体から、命いっぱいの声を発し、 力強く泣いて息を吸う。
あまりの感動に涙が溢れ、 抱いた腕が震えた。
生まれてきてくれて、本当にありがとう。 |