元・チューケン行政人通信

元地方地方公務員の知られざる日常と本音! そして「男女共同参画」を自分の言葉で語ります。 ※このブログの筆者はある地方公共団体の元職員ですが、感想、意見にあたる部分はすべて筆者個人のものであり、元所属団体としての見解を示すものではありません。
 
2016/09/25 12:13:00|チューケン行政人随報
ありがとう みんなのチョコ
2008年12月30日、家族が一人増えた。猫である。
生後7か月、メス。

団地生まれ、団地育ちの私は、それまで金魚とザリガニしか飼ったことがなかったので、猫をもらってくることに、あまり気乗りがしなかった。

育てるといえば、人間の子どもなら幼児から一人、乳児から一人、育てたことがあるので、苦労は知っていた。
なぜ自分の子どもでもないのに、猫を育てるという苦労を買わなければならないのか、という感覚である。

妻はかつて実家で、猫を飼っていた。
上の子(中1)は殊の外、猫を欲しがっていた。
下の子(小1)はなぜか猫が好きで、小さいころからよく野良猫を追い回していた。

私一人で、猫の受け入れを反対するほどの理由も思いもなかった。
まあ、飼ってみるか。

猫が来て数日。まだ私たち家族に人見知りしているようなときに、妻と子ども二人が、前々から予定していた2泊3日の沖縄旅行へ。
猫経験の最も少ない私が、いきなり猫と二人きりのお正月。

ちょうどトイレの場所も覚えてくれたところなので、エサと水さえやっていればよい。これは、下の子の育児休業よりもだいぶん楽だ。
とはいえ、初めての猫と3日間1対1。少し緊張した。

猫としても、他の家族が居なくなってはしかたがない。
猫に慣れていない私の前にでも、現れるしかない。

私が夕食に焼きそばを作って食べていたら、寄ってきた。「食べたいのかな?」
今思えば、そんな味の濃い物など、食べたいはずがない。きっとこう言いたかったのだ。「あんなにいた他の家族は、どこに行ったのか?」

妻たち三人は沖縄から帰ってくると、その猫を「チョコ」と呼ぶようになった。
私としてはうっすら「ミースケ」と呼んでいたが、メスだし、茶色いし、妻たちはどうも「チョコ」がしっくりくるようだ。

私一人で、ミースケを推すほどの理由も思いもなかった。
まあ、チョコでいいか。

それからチョコは、どんどん私たちに慣れていった。
次の年賀状には、家族の一員として登場した。

エサを求めるときだけは、顔が違うのがわかった。生活がかかっている感じ。
「一人にさせといて!」の顔もわかってきた。眉をひそめて短く鳴く。

エサをやる人間の手には、感謝の頬ずりを忘れなかった。
食べ終わると、家じゅうをパトロール。
お気に入りの場所は、サンルームの網戸の前と、陽の当たる廊下。

チョコは毎日、いろんな場所で寝た。
上の子のベッド、私たちのベッドや椅子の上。サンルームのテーブルの上、廊下に置いた洗濯かごの中、リビングのソファー、冷蔵庫の上…
夏休みには毎日、下の子の遊び相手になった。

私が家の外で何かしていると、窓越しに見に来る。
家猫なので、なるべく外の空気を吸わせるようにした。
日に一度、野生に還ったように、部屋から部屋へと駆け回った。夜だったな。

チョコが居ることがあたりまえになった。
チョコが元気で居ることがあたりまえだった。
病気もケガもせず、医者に診せたことがなかった。

家族旅行のときは、チョコ一人でお留守番。
「エサが多めになっているときは、要注意なのよ!」

それもかわいそうなので、妻の父に来てもらうことにした。
妻の父いわく、「(エサをくれる恩人なのに、)チョコはつれないそぶりなんだよ。」…定番の笑い話になった。

私たちが帰ってくると、チョコは姿を見せず、どこかで拗ねている。
会ってもしばらくはキョトンとしている。家族の顔を忘れたか?

いつのころからか、毛づくろいをする時間が長くなった。
水皿の水が、早く減るようになった。
また少し太ったな。

体の毛が、目立って抜け始めていた。脚の内側、わきの周り、目の上…皮膚を掻き壊したか、血がにじんでいることも。

毛が抜けるのは、年相応という話を聞いた。8歳になれば、そんなものだと。
しかし上の子に促されて、妻がはじめて動物病院に連れて行った。

はじめてのお薬。
錠剤の小さなかけらを、エサに混ぜてやると、気がつかないかのように、普通に食べた。

チョコが6日分のお薬を飲み終わって、一週間経った。
別段、変わった様子はなかった。

その夜、夜更かしがちな私が床に就こうとしたのは、2時20分ごろだった。
チョコがちょうど私の枕の前に寝ていたので、動かすしかなかった。
「こっちで寝てね。」寝ている妻の横に、ずらした。

私が温かいチョコに触れたのは、それが最後だった。

翌朝、チョコは突然さよならしてしまった。
2016年9月21日、朝5時10分。
上の子が発見した。

椅子の下で、変な姿勢になっていた。
椅子の下は、チョコの寝る場所ではない。

冷たくなりかけていた。

妻と上の子は、泣いた。
私と下の子は、心で泣いた。

チョコは穏やかに生きて、穏やかに死んでしまった。
チョコがいた8年間が、幸せだったと気づいた。
チョコありがとう。

猫がこんなに私たちに思い出をくれるのなら、飼い主がいなくて困っている猫がいたら、また飼おうと思った。

チョコも、そんな一匹だったので。





     コメントする
タイトル*
コメント*
名前*
MailAddress:
URL:
削除キー:
コメントを削除する時に必要になります
※「*」は必須入力です。

※コメントは投稿後、ブログの管理者が承認した後に表示されます。