むかしのお話です。喜多院の住職で実海僧正(第14世)といわれるお坊さんがおりました。お坊さんは大変徳が高く、たくさんの人から慕われておりました。ある時、実海僧正が本堂でお経をあげていると、見慣れない小僧が現れ、「私は新三位と申します、どうか弟子にしてください。」と言ってお堂の隅に座り込み、一緒に拝み始めました。それからというもの僧正の行くところには必ずついて行き説法を聞いたり、掃除洗濯と毎日かかしたことがありません。夜は皆が寝静まってから学問にいそしみ、そんな毎日がつづきましたが、くじけませんでした。 ある日、寺男がなにげなく新三位の部屋をのぞくと、なんと一匹の狸が疲れた様子で寝ていました。寺男がびっくりして大声を出しますと、狸はびっくりして目を覚まし、正体がわかってしまったことに気づき、僧正さんのところに行き、「私は古くから喜多院の床下に住む狸です。僧正さんの説法を聞いていると心が動き、弟子になって修行したいと頑張ってきましたが、正体がわかってしまい、もう、ここにはいられなくなりました。今までの御恩は忘れません」と言って床下に姿を消してしまいました。喜多院の床下には大きな穴がいくつもあり、それがあちこちに続いているそうです。(川越市教育委員会発行 新川越の伝説より) |