カツマタクラス

 
2017/09/20 16:09:02|その他
地図について
とぼけた話になるが、つい先日、廊下にきれいな写真があることに気づいた。「アース・アット・ナイト」というNASAの作った真っ黒な衛星写真である。抜群に美しいのだが、何か不自然な気がして頭から離れなくなった。
地球の夜。アメリカ東海岸、英仏を中心としたヨーロッパ、そして日本。真っ暗な世界地図に光の網が様々にかかっている。しかし、南極大陸やタクラマカン砂漠、アフリカ大陸のあたりは真っ暗である。人間の町のある場所だけが光に包まれている。
そういえば。いつか西日本を旅したとき、萩の町は八時で既にひっそりとして、誰一人歩いていなかった。旧市街の城のあたりは、街灯もまばらで、江戸時代の夜は真っ暗だったのだ。新宿でも当時はきっとこの美しい星空が見えたのだろうと思った記憶がある。
この蜘蛛の巣を張り巡らしたような光の跡は、あまりに衝撃的だった。
が、私の感じた不自然さは、そこにない気がして、しっくりしないまま数日が過ぎた。はっと気づいたのは、息子の世界地図を見させられたときである。その本では、夜の領域と昼の領域が一枚のフィルムで分るようになっていたのである。そう、「アース・アット・ナイト」には、昼が描かれていなかった。
日本が夜のときに、ロンドンが夜のわけはない。NASAの地図を見たとき、地球が、太陽がない星のように感じたのだ。地球儀ではロンドンと東京を同時に見ることが出来ないが、メルカトル式の世界地図なら見ることが出来る。だから、最も暗い夜だけを切り取って貼り付けたはずのこの地図も、あって当然なのかもしれない。私が太陽のある生活に慣れきっているだけかもしれない。しかし、それでも。
「夜」を普通の人間には、何をどうやっても見えない姿でデフォルメ(誇張)して描いて見せてくれたこの地図の制作者に感謝すべきなのかもしれないが、なにか不思議な感じがした。

ちなみに、これは他の場面にも言えることであって、たとえば、水族館のような極彩色の場所は、世界中の海でもほとんどないし、動物園でのように百メートル歩けば、象にも犀(サイ)にも麒麟(キリン)にも会えるというようなことは、どんなサバンナにもなかなかないらしい。富士山頂上からの絶景は、テレビではなくて実際の場所から見る。そういう経験を、一生に一度くらいしておくべき気がする。